山上被告の最終弁論要旨=安倍氏銃撃公判

2025/12/18 20:53配信【時事通信社】

 安倍晋三元首相銃撃事件で、山上徹也被告の弁護側が18日に行った最終弁論要旨は次の通り。 【経緯・動機】 2021年秋ごろ、被告は安倍元首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)関連団体のイベントで、韓鶴子総裁にお祝いの言葉を贈る動画を見た。被告は政治的に元首相を支持し、旧統一教会とのつながりは見て見ぬふりをしていた。しかし、旧統一教会が勢いを取り戻していく中で、徐々に元首相に対する嫌悪感や敵意が強まっていった。 安倍元首相は日本において最も影響力のある政治家で、韓総裁に祝辞を贈ることは、旧統一教会が日本社会の中で承認されていくことを意味した。家族崩壊も、その他の被害者の問題も解決されないまま、なかったことになってしまうと感じた。それは被告にとって強烈な危機感と絶望感であり、以降、元首相は襲撃対象として頭の片隅に存在し続けた。 被告にとって手の中の銃は弱く、元首相が命を落とす確率は高くないと考えていた。結果がどうなるかは神のみぞ知るという感覚だった。 【どう評価すべきか】 旧統一教会が被告の母に対して行った違法な献金勧誘活動により、悲惨というほかない家庭の不幸が生じたことは明らかだ。宗教2世は社会問題として置き去りにされていた。 被告は、旧統一教会を恨みながら自死した兄を思い、他方で兄の死を冒涜(ぼうとく)するように感じられる母の言動に接し、人生を根こそぎ奪った旧統一教会に打撃を与えるため幹部の殺害を決意した。それが不可能とみるや、最も関係が深いと認識されていた元首相を標的にした。将来を失った者の絶望の果ての犯行と言うべきだ。量刑判断において最も重視されるべき犯行動機に深く関わる。 被告は安倍元首相を殺害することによって政治を動かして旧統一教会にダメージを与えることを意図したのではない。銃を発射した際も近くにいた候補者に当たるとは考えていなかった。事件後に政府による解散請求がなされるまでの事態に発展したのも被告が意図したものではない。 検察官が主張するほど綿密に高い確実性の下に犯行を遂行したとは言えない。安倍元首相が当日、現場を訪れたのは相当の偶然だった。被告は思考や行動の傾向に旧統一教会の影響を受けており、元首相の奈良への再来を「偶然を超えたもの」のように感じ、銃撃を必ず遂行する行動に出てしまった。警備も必ずしも十分だったとは言えず、そのことが重大な結果に結び付いた側面もある。 【量刑と考慮事情】 本件の量刑は銃を用いた殺人の中でもかなり軽い方に属するとしても決して不合理ではない。1人の命を奪ったのは事実だが、選挙妨害を意図したものではなく、政治に影響を与えようとしたものでもない。再犯の可能性は低く、今後の立ち直りが十分に期待できる。懲役刑の刑期は最も重くても20年までにとどめるべきだ。 


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