【祝・準々決勝進出】圧倒的な打力で勝ち切る侍ジャパンはどこがスゴいのか? 2026年WBC東京プール4戦総括

2026/03/12 22:00配信【サイゾー】

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 東京ドームを舞台に行われた2026年WBCで、侍ジャパンは4連勝という結果だけでなく、勝ち方の多様さを示す内容で準々決勝進出を決めた。


 初戦の台湾戦は打線が爆発しての大勝、韓国戦は互いのプライドがぶつかる打撃戦、そしてオーストラリア戦とチェコ戦は終盤にここ一番の打力と継投で競り勝つ接戦。


 試合ごとに異なる展開を制したことは、日本代表が単なる強打のチームではなく、状況に応じて試合を動かせる総合力を備えていることを示している。


 一方で、優勝を見据えたときには、投手起用の序列、上位打線の改善、細部のディフェンス力など、さらなる完成度を求められる課題も浮かび上がった。


 東京プール4試合を振り返りながら、侍ジャパンの強さと現在地を整理していく。


常勝軍団を築いたマネジメントと哲学


圧勝・打撃戦・接戦――侍ジャパンが示した“打ち勝つ力”


 2026年3月9日時点で、日本はWBC東京プールで台湾(チャイニーズ・タイペイ)戦を13-0、韓国戦を8-6、オーストラリア戦を4-3で制し、3連勝でプールC首位と準々決勝進出を決めた。さらに最終戦のチェコ戦も快勝だった。


 しかも内容は、初戦の圧勝、2戦目の打ち合い、3戦目と4戦目の終盤まで接戦となった勝利と、侍ジャパンの強さが一つの勝ち方に依存していないことをはっきり示した。


 緊張感が高まる初陣となった台湾戦は、連覇を狙うチームにとってこれ以上ないスタートだった。大谷翔平が初回先頭で二塁打を放って流れをつくると、2回には満塁本塁打で主導権を一気に奪取。日本はこの回に10得点を挙げ、大谷の同回5打点とあわせてWBC史に残る猛攻となった。


 3回にも加点し、投げては山本由伸が2回2/3を無安打、藤平尚真が満塁のピンチを断ち切るなど継投も安定。13-0の7回コールドという結果以上に、打線の破壊力と投手陣の層の厚さを同時に見せつけた一戦だった。


 ライバル韓国戦は一転して、序盤から感情と技術がぶつかる日韓戦らしい打撃戦となった。日本は菊池雄星が誤算の立ち上がりで初回に3点を先行されたが、その裏に鈴木誠也の2ランですぐに追い上げ、3回には大谷、鈴木、吉田正尚といったメジャーリーガーの一発攻勢で逆転。


 だが、5-3からすぐ5-5に追いつかれたように、試合は最後まで流れが定まらなかった。それでも7回、種市篤暉の三者連続空振り三振で空気を引き戻すと、その裏に押し出し四球と吉田の2点適時打で勝負を決めた。


 この試合で際立ったのは長打力だけではない。終盤に四球を選び切る打席の強さと、救援陣が流れを断ち切る対応力が、日本の総合力を物語っていた。


 オーストラリア戦は、ここまでの2試合とは逆に、日本が我慢を強いられる展開だった。オーストラリアの投手リレーの前に6回まで無得点。6回表には送球ミス絡みで先制も許した。


 しかし、先発の菅野智之が4回無失点でベテランらしい投球を見せ、一時はリードを許しながらも1点を追う7回に吉田が逆転2ラン。8回には佐藤輝明の適時二塁打と鈴木の押し出し四球で突き放し、9回に2本のソロ本塁打を浴びながらも4-3で逃げ切った。


 天皇、皇后両陛下と愛子さまが観戦する“天覧試合”で競り勝ったことも特別だったが、それ以上に大きかったのは、日本が大量点だけでなく、接戦を終盤の一打と継投で拾えることを証明した点にある。


 そして4戦目のチェコ戦は、9-0というスコアほど単純な試合ではなかった。日本は7回まで無得点で、チェコ先発オンドジェイ・サトリアの緩急自在の投球に手を焼いた。それでも投手陣は髙橋宏斗が4回2/3無失点、宮城、金丸夢斗、北山がつないで被安打2、14奪三振の完封リレー。


 均衡を破ったのは8回で、若月の二塁打と相手失策で先制すると、周東佑京の3ラン、さらに村上の満塁本塁打で一気に9点を奪った。打線が苦しんだ現実と、ひとたび隙を見せた相手を一気に飲み込む破壊力の両方が出た試合だった。


 総括すれば、東京プール4試合で最も評価できるのは勝ち方の幅だ。台湾戦では初戦の爆発力、韓国戦では主軸の長打力と終盤の勝負強さ、オーストラリア戦では接戦処理、チェコ戦では我慢比べの末の終盤集中打が光った。1次ラウンドでここまで異なる展開をすべて勝ち切れたのは、連覇を目指すチームとして大きな収穫だ。


投手陣は厚いが「本当に計算できる枚数」は絞られる


 ただし、課題が消えたわけではない。まず投手陣は、東京プール4試合の公式ボックススコアを合算すると14投手を起用し、34イニングで9失点と全体成績は優秀だ。


 その中で内容まで含めて強く評価できるのは、台湾戦で2回2/3を無安打に抑えた山本由伸、オーストラリア戦で4回無失点の菅野智之、さらに韓国戦とオーストラリア戦で計2回を無安打5奪三振と圧倒した種市篤暉あたりが中心になりそうだ。少ないイニングながら、台湾戦で満塁の火消しを決めた藤平尚真も短い勝負なら使いたい。


 また、隅田知一郎や宮城大弥、髙橋、金丸、北山なども、数字と内容を合わせて見る限り計算できる。伊藤大海は同戦で一発を浴びて2失点したが、国際大会の実績や一発以外の内容を考えると起用は考えられる。広く見ても先発は2枚、全体で8?9枚前後というのが実態に近い。これは層が薄いという意味ではなく、まだ“絶対的な序列”が固まり切っていない。


 逆に不安材料もある。韓国戦では先発のメジャー組で期待されていた菊池雄星が初回に3失点。ソフトバンクを日本一に導いた松本裕樹が1失点と満塁のピンチを招き、オーストラリア戦では前回大会を経験している大勢が9回に2本のソロ本塁打を許した。


 もちろん短期決戦では1試合の出来で全評価は決まらない。ただ、アメリカやドミニカ共和国、ベネズエラ、イタリア、カナダ、プエルトリコといった長打力を持つ打線と当たった時、立ち上がりの入り方と終盤の一発回避には、もう一段の精度が必要だろう。


 打線も強力だが、依然として大谷、吉田、鈴木への依存は小さくない。4試合の公式ボックススコアを合算すると、大谷翔平、吉田正尚、鈴木誠也の3人で36打点中17打点、37安打中14安打を占めている。大谷は9打数5安打6打点、吉田は12打数6安打6打点、鈴木は9打数3安打5打点。中心の3人が別格なのは心強いが、見方を変えれば得点生産がこの3人にかなり集中しているとも言える。


 源田が7打数4安打4打点、周東が4打数2安打3打点、若月が7打数3安打、佐藤が6打数2安打と他の選手の働きもある。一方で村上はチェコ戦の満塁弾で15打数3安打5打点まで戻したが、近藤健介は無安打、岡本和真は2安打1打点、牧秀悟は2安打1打点、森下翔太は1安打。より強い相手と当たった時に中軸3人以外の得点力がどこまで続くかは、なお見極めが必要で、全体としては“主役3人頼み”の色が残っている。


 この課題は単に下位打線が弱いという話ではない。むしろ気になるのは、2番から6番までのつながりだ。


 韓国戦は本塁打で押し切れたが、オーストラリア戦では12四球を得ながら5安打しか打てず、吉田の一発が出るまで無得点が続いた。相手投手のレベルがさらに上がった時、一発で決め切る力や、チャンスの場面で内野ゴロでも得点するなど、泥臭くランナーを返せるかどうかは重要になる。


 優勝を狙うなら、前回大会で打撃面で貢献した近藤、岡本、村上のうち少なくとも2人が上向き、さらに佐藤をうまく使いこなせないと、打線全体の圧力はもう一段上がらない。


 ここで期待されるのが周東だが、台湾、韓国、オーストラリアの3試合では途中出場だった。しかも3試合とも代走や終盤の守備固めから中堅に入る形で使われ、韓国戦では終盤の中堅守備でも勝利を助けた。チェコ戦で初めて「7番・中堅」で先発すると、4打数2安打3打点で、8回には3ラン本塁打を放っている。


 韓国戦とオーストラリア戦では代走で出場して2盗塁も決めた。この起用法から考えると、首脳陣は周東をまず「終盤で試合を動かすカード」として高く評価してきたと見るのが自然だ。機動力と守備範囲はすでに実戦で効いており、特に接戦終盤では価値が大きい。したがって現時点の私見は、「無条件の固定スタメンではないが、準々決勝以降に先発昇格は十分ある」というものだ。


 ポイントは、その場合に誰を外すかだ。大谷がDHに入る限り、周東を先発で使うには基本的に近藤、鈴木、吉田の誰かを外す必要がある。一方で近藤は無安打と苦しんでいる。打線の厚みより守備力、機動力、球際の強さを優先するなら、周東を中堅、鈴木を右翼へ回し、近藤をいったんベンチスタートにする案はかなり現実的だ。しかし周東をスタメンで起用する場合、切り札として使えなくなるデメリットもある。


球際を含めたディフェンス力の精度には改善余地がある


 守備面は数字だけなら4試合で2失策。韓国戦は無失策で、9回には周東がフェンス際で打球をもぎ取る好守も見せた。一方で台湾戦では失策と2四球が重なって満塁のピンチを招き、オーストラリア戦では若月健矢の送球が逸れて先制点を失った。


 つまり守備力そのものが低いわけではなく、むしろ一発で試合を救える身体能力は高い。韓国戦とチェコ戦は無失策で終えたものの、国際大会の接戦は一つの送球、一歩目の反応、球際の強さで勝敗が左右される。守備力は十分高いが、「安定してミスを消せる守り」まで仕上がったかといえば、まだ上積みの余地はある。


 東京五輪で参加国最少クラスの失策数を記録し、2023年WBCでも2失策にとどめたことを振り返れば、出場国屈指のディフェンス力を見せていたチームだけに、球場が変わるこのタイミングでのテコ入れは必要だ。


 それでも、チェコ戦までを含めた東京プールの総括は明るい。侍ジャパンは、強いだけでなく、試合ごとに異なる問題に対応しながら勝てるチームであることを示した。だからこそ今後の焦点は、主軸以外の打線の底上げ、終盤を任せる投手の整理、球際を含めた守備の精度に絞られる。ここがもう一段整えば、東京で見せた4連勝は単なる好スタートではなく、連覇へ向けた本格的な土台だったと言える。


 侍ジャパンは強さを見せた一方で、“完成されたチーム”というより、“優勝できる力を持ちながら、さらに上積みが必要なチーム”だ。投手陣は質が高いが、運用や継投策の優先度をもう少し明確にしたい。打線は主軸3人が突出しているだけに、その前後を打つ打者の復調が欲しい。守備は好プレーも出ているが、球際と送球の精密さをもう一段上げたい。


 この点が整えば、東京プールで見せた強さは本物の完成形へと近づいていく。


イチローと松坂大輔が作った礎


(文=ゴジキ)



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