おわび行脚、コメ失言の余波=沈黙の公明票、自民・国民が秋波―衆院宮崎2区ルポ【注目区を行く】
「本当に、本当に、言ってはならない一言だった。本当に申し訳ありませんでした」。1月31日、宮崎県日向市の田園地帯にあるJAみやざき農業機械センター。農業関係者約100人を前に、自民党前職で元農林水産相の江藤拓が深々と頭を下げた。昨年5月、米価高騰が続くさなかに「コメは買ったことがない」と言い放った失言で閣僚を辞任。その余波は続き、窮地に立たされている。(敬称略) 江藤は父で建設相などを務めた故・隆美から保守地盤を引き継ぎ、2003年から8連勝。郵政民営化法案に反対して党公認を得られなかった05年の郵政選挙でも勝利し、強固な城壁を誇ってきた。 だが今回は、各社情勢調査で国民民主党の前職、長友慎治に先行を許し、金城湯池にほころびが走っている。前々回、前回とも江藤が勝ったものの長友の比例復活を許し、票差は約3万7000票から約1万3000票へ縮められた。そこに失言と連立の枠組み変更が追い打ちをかけた。 ◇「比例は中道」と言えず 公明党が自民との連立政権を離脱して初めて迎えた衆院選。2区の公明票は「1万5000票」(自民県連関係者)とされ、勝敗を左右するとみられる。公明が立憲民主党と結成した中道改革連合は選挙区候補を立てていない。公明県本部は「『態度を決めない』ということを決めた」(関係者)とし、沈黙を続ける。 長年、選挙区と比例代表で票の「貸し借り」をしてきた江藤と公明の協力関係が成り立たなくなった。江藤陣営の関係者は「比例は『中道』とは言えない。今までのようにはいかない」と声を落とす。 ◇自主投票 江藤は地元に張り付くようにして演説会を重ね、謝罪行脚を続ける。ポスターは首相の高市早苗とのツーショットに差し替え、政権中枢との近さを前面に出す。「私は一番現場をよく知っている政治家として有名だ」。豊富な農政経験を売りに、揺らぐ農業票の引き戻しを狙う。 江藤を推薦する県内最大の農業系政治団体「宮崎県農民連盟」は、比例代表で自民を推すことを決めた。ただ、2区内の支部の一部から比例選の「自主投票」を求める声が上がり、連盟は事実上容認した。従来、選挙区で公明の支援を得るため比例は自主投票としてきた経緯があり、今回も公明の協力を引き出す余地を残した格好だ。連盟関係者は「(江藤の)公明票がゼロにはならないことを期待している」と語った。 ◇国民側、支援を打診 長友は初の選挙区勝利を目指す。旭化成発祥の地、企業城下町の延岡市を中心とする労組票が基盤だ。ほぼ毎週末に国政報告会を開き、地元密着を積み重ねてきた。従来の支持層を固め、自民支持層にも浸透する。 陣営の地方議員は公明関係者と接触し、個人的に支援を打診した。「選挙区は人物本位だ」と明確な回答は得られなかったものの、「はっきり言いづらいだけで長友寄りの印象だ」と受け止める。連合関係者も「公明票の半分は長友に流れるだろう」と語った。 「私が選挙区で勝たないと仲間が増えない。私が比例(復活)の枠を使っている場合でない」。長友は31日、江藤の出身地・門川町でそう訴え、街宣車に乗り込んだ。この日、江藤も街宣車で門川町を回り、住宅街で両候補の名前が交錯した。 ◇衆院宮崎2区立候補予定者白江 好友(37)党県常任委員 共産 新人江藤 拓(65)元農林水産相 自民 前職(8)長友 慎治(48)元党政調副会長 国民 前職(2)(注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日現在。丸囲み数字は当選回数。
