GDPの1割超喪失=生産停滞、全国に波及―首都直下地震

2025/12/19 11:10配信【時事通信社】

 政府が19日発表した首都直下地震の被害想定は、経済的な被害額を国内総生産(GDP)の1割超に相当する83兆円と見込んだ。建物の耐震化や企業の事業継続に向けた備えが進んでいるとはいえ、本社機能や決済システム、通信インフラがダメージを受ければ、全国的に経済活動が停滞するのは避けられない。 被害の内訳は、住宅や工場の倒壊など被災地の直接的な被害が45兆1000億円、経済活動の停滞に伴う間接的な損失が地震発生から1年間で37兆5000億円。2013年にまとめた前回想定の計95兆円から縮小したものの、建設費の高騰で復旧費用がかさみ、直接被害額の縮小は限定的だった。 全国に波及する被害額は、建物の被災や労働力の減少を踏まえて推計した。企業の本社機能低下やサプライチェーン(供給網)寸断による影響も加味した。卸売りや小売りなど流通網が目詰まりすれば、消費生活に支障が生じる。東京湾岸に集積する製鉄所や石油化学工場の生産・出荷停止も、自動車など幅広い産業で素材の供給停滞や輸出減少を招く恐れがある。 交通インフラが復旧するまでにかかる迂回(うかい)コストや販売などの機会損失も別途試算。道路と鉄道が半年間で11兆円、港湾は1年間で4兆円超と見積もった。これらの推計には土地や建物の資産価値の下落、企業の撤退・倒産、国際競争力の低下などは算出が困難なため含まれず、実際の被害総額は見通せない。 企業活動の停滞は建物被害だけでなく、電力や通信といったライフラインの停止で起こる場合もある。インターネットや人工知能(AI)の利用が広がる中、首都圏に集積するデータセンターが被災すれば、ビジネスが一斉にストップしかねない。三菱UFJリサーチ&コンサルティング防災・リスクマネジメント研究室の平野誠也室長は、「会社に物理的な被害がないのに、国内外の物流や生産に影響が広がる恐れがある」と指摘した。 


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